定食屋の進化
新しい定食屋の試みであると、この店をおとずれるたびに思う。福島県郡山市にある「菜々家」というレストランのことだ。幹線沿いに面した駐車場を持った郊外型の食堂である。店内に入っても窓が大きく取られ明るい。レストランというより食堂と言う方がぴったりくる。
メニュー構成はきわめてシンプル。鳥・豚・魚のメイン料理一品を注文する。ご飯とみそ汁がついている。気取ったメニューではない。とんかつ、唐揚げ、生姜焼き、家庭でよく登場する基本メニューばかり。値段は800円前後、これも昨今のファミレスと比べるとちょっと高めかもしれない。
たとえば、これは「鳥唐揚げの黒酢ソース」。ご飯とみそ汁つき。
この客層の広さの秘密は、サラダバーにある。前菜と呼ぶ大皿に盛り付けられた料理が取り放題。基本的に肉類は主菜なのでサラダバーにはない。野菜の料理のみ。生野菜は色合いを考えた4種類。人参、水菜、玉ねぎ、キャベツ。サラダバーの定番レタスはない。前菜は7種。こんにゃく、サトイモ、サツマイモ、ジャガイモのサラダ、高野豆腐、大根の煮物、ショートパスタ。味付けは比較的薄味で、化学調味料を使わない。サラダドレッシングは自家製。いろいろとこだわる点は、ポイントを押さえている。取り放題だからといって何度も取取りに行く人はさほどいない。
顧客視点での大事なことは選べること、見た目に変化のある野菜料理であること、これが「お買い得感」「バリュー」感を高めるのだ。
ステーキとサラダバーの組み合わせが人気のレストランもあるが、日常食という切り口で定食+前菜を整理しなおしたことが、このお店の正解である。
写真左が前菜、右側が生野菜に自家製玉ねぎドレッシングをかけた。
ドリンクバーとデザートはそれぞれ追加。ドリンクも炭酸飲料は一切ない。お茶、ジュースが数種類提供される。
全体に心配りが行き届いているなと感じるのは、こうした顧客層に合わせたディテールを積み重ねていること。そして、ごちそうを食べにくるレストランではなく、毎日来ても飽きの来ない定食屋を目指していること。
コンビニエンスストアーとの食い合いを強く言われる外食業ではあるが、コンビニと対抗しうるコンセプトもしっかり作れるのだという証明のような店であり、定点観測するべきところであると強く思う。
福島県を中心に仙台にも展開中。
旬菜 うちごはん 菜々家
http://www.na-na-ya.jp/news/
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