ロードサイドという立地の盛衰について  考察その2 物販チェーンによる栄枯盛衰

全国あちこちを車で走り回ると、街道沿いによく見つかる特徴のある建物がある。
すでに消滅した物販チェーン店「おもちゃのハローマック」
なぜハローマックは無くなってしまったのか。子供の数が減った、トイザらスのような大型店ができた。子供の好きなおもちゃがゲームに変わってしまった。(最近ではゲームソフトの店もどんどん潰れている)理由はいろいろとあげられるのだが、おそらく一番の強敵、モールの出現が最大の理由であると思う。もともとオモチャは日常的に変われるものではない、。子供イベントに合わせて親が買い与えるのが最大需要だ。
もし、子供がお小遣いを握りしめ自分で買いに行くのだとしたら、うまくすれば毎日買いに来てくれる駄菓子屋のような業態なら、生き残れたのかもしれない。
郊外型立地とは親の車に乗せられてくるような不便な場所だから、子供の日常使いには最も遠い。一番のファン層である子供にとって、とてつもなく遠い場所。この辺りが衰退の原因だと思う。

元「ハローマック」、今はBookOff。そういえば、ブックオフは元ユニクロとか、元アルペンとか、閉店したところによく出店している。建物をいじくりまわさないので、元○○というのがわかりやすい。

大店法の規制に合わせた(規制に引っかからない)、ギリギリの大きさ(確か500平米未満)で、街道筋にボコボコたけのこが生えるように出現した郊外型店舗の一つだ。
ドラッグストアー、紳士服、靴、本屋などなど郊外型のチェーン店は多い。都市中心部から脱出し郊外住宅地近くに駐車場併設店として塊を作った。のちに大店法の規制が緩み、大型ショッピングモールができると、どれも一様にモールの中へお引越しをした。街道筋には、その撤退の跡が残されたままだ。

郊外型店舗の消滅の原因がこれ。法律・規制緩和による出店条件の変化だ。もともと生活道路と言われる二車線程度の幹線が、渋滞がひどくなり町の中心から外れたバイパスという道に付け替えられる。車の流れも変わるが、バイパス自体が畑の真ん中に通るので、道の周りはあき地だらけ。そこに、新規出店が重なり郊外型商業地区のような具合に自然発生的な町ができる。
しかし、この街は都市計画があったわけではないから、意外と使いにくいし見た目もきれいではない。そこに大型ショッピングモールという人工都市が、高速道路のインターチェンジ附近にできる。新し物好きの消費者は根こそぎそちらに移動。そして、インターチェンジ附近に位置することで、モールの商圏は巨大化する。半径50kmまで広がり影響度は周辺の町々に及ぶ。
すでに郊外型店舗の増加により都市中心部の商店街は衰退していたのだが、このモールの開店でとどめを刺される。一部はモールに移転、残りは廃業という構図だ。
典型的な地方都市衰退の姿たが、この展開が完結するまでおおむね20年近くかかっている。1970年代後半から80年代に起きた、郊外型店舗の出店。モールの展開が90年代後半に始まり2000年代前半がピーク。
その間に都市中心部の商店主は世代交代が行われた。跡継ぎがいれば、郊外への移転かモールへの引越し。跡継ぎがいなければ廃業し、町はシャッター街へ変貌。

だから初期型マクドナルドもミスタードーナツもKFCも、みんなその町の一号店は商店街に出た、2号店が駅前、駅ビルに出たのは広域商圏を狙って。ところが3号店でバイパス道路に出店し、その後モールにも出店する。そうすると街中の店や駅前の店が自店間競合で急速に売上を減らし閉店。郊外型店舗もモールの集客力に勝てず、契約満了時には退店。
スクラップ&ビルドと言えば聞こえはいいが、要するに店舗数は減るだけ。

これが2000年代後半から現在に至る外食各社の姿だ。
地方都市の郊外型レストランというものは、ここまで説明したような展開で急速に拡大し、そして今や風前の灯的な衰えを見せる。ところが首都圏都の周辺都市では状況がちょっと違う。首都圏の都市部は、住宅が密集しているのでバイパスは簡単にはできない。必然的に住宅地近くの生活道路沿いの立地に出店する。駐車場がある車対応型の店であるが、立地としては幹線沿い立地と駅前繁華街立地の中間的な場所になる。だから自転車で来る客も多い。商圏も小さい。こうした都市型の店は、地方都市のような環境変化は起こらないので、長生きする。ロイヤルホストの世田谷馬事公苑、マクドナルドのドライブスルー一号店は、杉並区高井戸。KFCドライブスルー一号店は東京都東村山市久米川、ミスタードーナツは(確か)大阪府箕面。実は郊外型店舗も当初は畑の真ん中に開いたのではない。
しかし、都市型商圏でもゆっくりと住む人たちは年老いていき、20年経てば当時の親たちはジジババになっている。そして、当時の小学生は、小学生の子供を持つ親になり、その街から何処かへ引越しているのだ。20年前にファミレスやファスートフードを支えていたファミリー層は都市商圏ですら変容し、場所によっては消滅するのだ。
都市近郊型と地方都市型の郊外型店舗は、異なる理由ではありながら、同じように立地としての力をなくしていく。
日本を20年先行すると言われるアメリカマーケットでも、似たようなことは起こっていた。特に公共交通機関を持たない中都市では顕著に起こっていたことだ。ただ、これを日本の外食企業は学ぼうとしていなかった。

丸亀製麺の業態転換店「コナズコーヒー」郊外型立地の再生となるか?


つまり、郊外型店舗の衰退は二つの理由で起こっていると考えられる。
一つ目は、環境の変化。主に規制緩和とモールの出店が原因だ。
二つ目は、学習不足、対応のまずさだ。アメリカで起きた先例を学ばず、また対応策を講じなかった。日本全体では、「失われた10年」などと言われる時期、外食企業は「失われたのではなく、勉強をサボったため」事業を停滞させたと言える。

ファミレスはもう少し状況が悪い。
もともと店舗数数とブランド数が過剰だった。ファミレス自体が洋食(ハンバーグとピザ)を中心とした似たような業態である。看板は違うが提供する商品はほぼ同じ、典型的なME TOO業態だから、丸亀製麺(うどん)や回転寿司などの専門性が強い業態が出ると、一気に打撃を食らう。
2000年にファミレス御三家と言われるすかいらーく、デニーズ、ロイヤルの退店が続いたのはそのせいだ。対応策は各ブランドで様々だったが、一番能動的に動いたのはすかいらーくであり、看板ブランド「すかいらーく」はほぼ消滅、ガスト(低価格業態)への転換で生き残る。
デニーズ、ロイヤルは店舗密度の高いところでは退店・閉店し、間引きによる個店の生き残りを図るが店舗規模は2割以上減らした。収益構造は改善したであろうが、店舗数が減ると事業のもう一つのエンジンである従業員の士気が持たない。店長の数が減るのだから当たり前だ。

では、なぜ郊外型立地の店舗はモールに負けたのだろう。モールも郊外型店舗も自動車で移動しなけれならない場所なので、移動条件は同じだ。
地方都市の繁華街は市内の駐車場不足、道路整備の遅れによる渋滞など、環境対応の問題が衰退要因であった。
しかし、郊外型店舗対モールという構造では、逆にモールの方が街から遠いだけに不利とも言える。大型駐車場は確かに飲み込み台数は増えるが、駐車場の端に止めるとたっぷり歩かされるという不便さもある。(土地がたくさんあるのに立体駐車場を作るのは、この地方都市住民の歩くの嫌だ・・・行動にあると睨んでいる。アメリカのモールは立体駐車場は作らないことが多いから、国民性なのだろう)
既存郊外型レストラン店舗の対応不足で片付けるのは簡単だ。(実際対応不足が主因の一つであることは間違いない)しかし、この事象は全国一律に同じ原因で起こっているわけではないと考えられる。

そこで、モールと郊外型立地の争いについて、幾つかの地方都市のモールと都市中心部の位置関係から考察してみる。
1 高知と宮崎  人口30万人超えの県庁所在地
(近隣に大規模都市がない商圏)
2 高崎と太田 人口37万人の新幹線駅と人口22万人の工業都市
(隣町と合併すれば政令指定都市と中核都市になる大規模商圏)
3 山形と仙台 人口25万人の県庁所在地と政令都市
(近接する大規模商圏との競争)
4 奈良と和歌山 人口35万人の県庁所在地
(大都市のベッドタウンと独立商圏)

長くなってしまった。この項、次回に持ち越し。





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