ロードサイドという立地の盛衰について その3 なんでもありから専門店へ
郊外型レストラン対ショッピングモールの対立状況を述べる前に、もう一つ理解しておいたほうが良いのが、ファミレスの構造劣化についてだ。
ファミレスが競合過多のためメニュー拡大という放散現象を起こし、結局何屋かよくわからなくなった時期がある。(今では開き直ったというか、洋風食堂チェーンではなく高価格大衆食堂チェーンになった)
デニーズがマグロ丼を売るようになったり、すかいらーくがうどんを置くようになったり、あれれという変化だ。
同じ時期に、居酒屋がファミレス化していた。
そもそも、居酒屋のメニューは酒のつまみなので、小ポーション低単価の構成である。
今やすっかり凋落した総合居酒屋だが、当時はワタミや甘太郎、天狗など強烈に出店拡大した時期であり、繁華街から郊外型立地への展開も行っていた。あるいは都市中心部から郊外住宅地駅前に展開の重心を移していた頃だ。
団塊の世代が、団塊ジュニアとその子供達を連れて、週末の食事はおじいちゃんのおごりというパターンが出来上がった頃でもある。三世代ファミリーが選ぶレストランとして、親(50−60代)子供(30−40代)孫(0−10代、小学生中心)が、それぞれ好きなものが注文できる場所。酒のつまみをおかずにご飯を食べる子供たちというのはいささか面食らうものがあるが、ファミレスでは食べられない焼き鳥がテーブルにどっさりというのもありなのだ。
料理を取り分けるのではなく、それぞれが自分の好きなものを注文した結果、テーブルの上はなんともまとまりのない風景になる。しかし、満足度は高い。
居酒屋がノンアルコールドリンクの増強、デザートの強化に走るのもこの頃だった。
もう一つ、勢力を一気に伸ばしたのが回転寿司だ。回転寿司は週末のファミリー需要に目をつけ、大型店でのピーク刈り取りを図る。カウンター席ではなくテーブル席が主流となり、メニューの寿司のネタを変えていく。魚の鮮度や種類を競う代わりにハンバーグや肉をのせたり、マヨネーズを使った軍艦巻きを作った。子供対応であったはずが、大人もこれにつられた。しかし、その子供対応の寿司がファミリーを呼び込み、居酒屋と同じ三世代化が進む。
その頃から寿司以外のサイドメニューの強化も始まり、これが結果的に食材原価を押し下げる効果があった。マグロのグレードを上げるよりカルビ軍艦やハンバーグ軍艦巻を売りだす方が、お客に喜ばれる時代となった。そうしたか和英ネタで育った子供達が自分で寿司を食べるようになると、回転寿司は回る寿司ではなくなり、注文で作る特急レーンなるものが登場し(ロスが出ないので原価低減効果が大である)、注文はタブレットから入力(人件費の節約)、ラーメンやカレーが売れ筋になった。回転寿司の省力化とファミレス化である。
居酒屋陣営は、その後の道路交通法改正による飲酒運転撲滅強化が直撃、マーケットを失うが、それでも郊外駅前の居酒屋は一定のファミリー層需要を取り切ることになる。しかし、結局のところファミリー層は確実に小さくなる。人口減の影響、高齢者の増加による消費低減(高齢者の外食費が落ちるのは、健康維持に関わる費用と相殺されるからだ、孫が大きくなると一緒に食事をしなくなることもある。)
ショッピングモールの進出、街中心部の衰退、従来郊外型マーケットの変調、など複数の変化に対応できていないのが、従来型のチェーン店であり出店の限界に達しているように見える。
その中で、変化として目立つのが従来繁華街にあった喫茶店の郊外展開と、低単価志向の和風ファーストフード「丸亀製麺」の出店拡大であった。
喫茶店は名古屋を中心とする中京圏のコメダコーヒーが成功事例として捉えられ、コーヒー大手を含めた出店が続いた。讃岐うどんの丸亀製麺は、ショッピングモールでの大成功を収めた上で、そこから飛び出し郊外型独立店舗に軸足を移し大量出店を成し遂げた。先行事例で「はなまる」の成功例があったが、簡便食としてその場で調理したうどんを食べさせる、しかも価格は安い、トッピングは自分の好みで調整という2000年代の時代感覚には、よくマッチしていたのが成功の要因だろう。しかし、その後郊外立地で急拡大できたチェーン、ブランドは現れていない。
状況を整理すると
1 郊外型立地の劣化の影響で、郊外型レストラン、物販店は減少した
2 郊外型レストラン・物販店の退店後には新しい業態が入った。
→ 新業態として居酒屋の郊外進出、回転寿司の大型店舗出店
3 ファミレス、物販店は間引きにより店舗数縮小、収益の改善を図った
4 一部のチェーンは新設ショッピングモール内に移行した
5 ファミレス化した居酒屋も、法規制、飲酒習慣の減少により郊外市場から退場しつつある
6 回転寿司もオーバーストアーになり、大手の寡占状態に移行。市場は飽和しつつある。
7 高齢者人口増大への対応は、未だに成功事例を見つけ出せていない。
→可能性があるのは日常使いが可能な「コメダコーヒー」のような郊外型喫茶店か?
次回は、地方都市の状況についてもう少し考えてみる。
ファミレスが競合過多のためメニュー拡大という放散現象を起こし、結局何屋かよくわからなくなった時期がある。(今では開き直ったというか、洋風食堂チェーンではなく高価格大衆食堂チェーンになった)
デニーズがマグロ丼を売るようになったり、すかいらーくがうどんを置くようになったり、あれれという変化だ。
同じ時期に、居酒屋がファミレス化していた。
そもそも、居酒屋のメニューは酒のつまみなので、小ポーション低単価の構成である。
今やすっかり凋落した総合居酒屋だが、当時はワタミや甘太郎、天狗など強烈に出店拡大した時期であり、繁華街から郊外型立地への展開も行っていた。あるいは都市中心部から郊外住宅地駅前に展開の重心を移していた頃だ。
団塊の世代が、団塊ジュニアとその子供達を連れて、週末の食事はおじいちゃんのおごりというパターンが出来上がった頃でもある。三世代ファミリーが選ぶレストランとして、親(50−60代)子供(30−40代)孫(0−10代、小学生中心)が、それぞれ好きなものが注文できる場所。酒のつまみをおかずにご飯を食べる子供たちというのはいささか面食らうものがあるが、ファミレスでは食べられない焼き鳥がテーブルにどっさりというのもありなのだ。
料理を取り分けるのではなく、それぞれが自分の好きなものを注文した結果、テーブルの上はなんともまとまりのない風景になる。しかし、満足度は高い。
居酒屋がノンアルコールドリンクの増強、デザートの強化に走るのもこの頃だった。
もう一つ、勢力を一気に伸ばしたのが回転寿司だ。回転寿司は週末のファミリー需要に目をつけ、大型店でのピーク刈り取りを図る。カウンター席ではなくテーブル席が主流となり、メニューの寿司のネタを変えていく。魚の鮮度や種類を競う代わりにハンバーグや肉をのせたり、マヨネーズを使った軍艦巻きを作った。子供対応であったはずが、大人もこれにつられた。しかし、その子供対応の寿司がファミリーを呼び込み、居酒屋と同じ三世代化が進む。
その頃から寿司以外のサイドメニューの強化も始まり、これが結果的に食材原価を押し下げる効果があった。マグロのグレードを上げるよりカルビ軍艦やハンバーグ軍艦巻を売りだす方が、お客に喜ばれる時代となった。そうしたか和英ネタで育った子供達が自分で寿司を食べるようになると、回転寿司は回る寿司ではなくなり、注文で作る特急レーンなるものが登場し(ロスが出ないので原価低減効果が大である)、注文はタブレットから入力(人件費の節約)、ラーメンやカレーが売れ筋になった。回転寿司の省力化とファミレス化である。
居酒屋陣営は、その後の道路交通法改正による飲酒運転撲滅強化が直撃、マーケットを失うが、それでも郊外駅前の居酒屋は一定のファミリー層需要を取り切ることになる。しかし、結局のところファミリー層は確実に小さくなる。人口減の影響、高齢者の増加による消費低減(高齢者の外食費が落ちるのは、健康維持に関わる費用と相殺されるからだ、孫が大きくなると一緒に食事をしなくなることもある。)
ショッピングモールの進出、街中心部の衰退、従来郊外型マーケットの変調、など複数の変化に対応できていないのが、従来型のチェーン店であり出店の限界に達しているように見える。
その中で、変化として目立つのが従来繁華街にあった喫茶店の郊外展開と、低単価志向の和風ファーストフード「丸亀製麺」の出店拡大であった。
喫茶店は名古屋を中心とする中京圏のコメダコーヒーが成功事例として捉えられ、コーヒー大手を含めた出店が続いた。讃岐うどんの丸亀製麺は、ショッピングモールでの大成功を収めた上で、そこから飛び出し郊外型独立店舗に軸足を移し大量出店を成し遂げた。先行事例で「はなまる」の成功例があったが、簡便食としてその場で調理したうどんを食べさせる、しかも価格は安い、トッピングは自分の好みで調整という2000年代の時代感覚には、よくマッチしていたのが成功の要因だろう。しかし、その後郊外立地で急拡大できたチェーン、ブランドは現れていない。
状況を整理すると
1 郊外型立地の劣化の影響で、郊外型レストラン、物販店は減少した
2 郊外型レストラン・物販店の退店後には新しい業態が入った。
→ 新業態として居酒屋の郊外進出、回転寿司の大型店舗出店
3 ファミレス、物販店は間引きにより店舗数縮小、収益の改善を図った
4 一部のチェーンは新設ショッピングモール内に移行した
5 ファミレス化した居酒屋も、法規制、飲酒習慣の減少により郊外市場から退場しつつある
6 回転寿司もオーバーストアーになり、大手の寡占状態に移行。市場は飽和しつつある。
7 高齢者人口増大への対応は、未だに成功事例を見つけ出せていない。
→可能性があるのは日常使いが可能な「コメダコーヒー」のような郊外型喫茶店か?
次回は、地方都市の状況についてもう少し考えてみる。
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